作家を目指すきっかけとなった、“大先生”とは

 時折、TwitterことXを見ていると、作家さん同士で「誰にあこがれて作家になろうと思ったのか」という会話を目にしたりします。

 大抵の作家さんが数々の有名小説家の名前を上げるなか、僕も改めて、なぜ作家になりたいと思ったのかという点を自問自答してみました。

 ちなみに僕が新人賞の投稿フォームなどで「あなたが好きな作家」という欄には、以下の3名の名前を書くようにしています。

  • 京極夏彦
  • 夢枕獏
  • 小野不由美

 いずれも現在の僕の人格や作風に大きな影響を与えた大先生たちで、特に京極夏彦先生については生まれて初めて、この人のシリーズを読破したいと、何度も本屋に通うきっかけになったほど。

 僕が兼ねてから新人賞である「メフィスト賞」に挑み続けているのも、この賞が元々京極先生が生み出したものだから、という点があるのかもしれませんね。

 そんな尊敬する作家陣に思いを馳せるなか、実は僕が小説家というより“作家”という存在になりたいと思ったきっかけは、さらに別の所にあったりするのです。

 なにかを生み出し、作り上げる人になりたい――僕にそんな思いを抱かせたのは、とある一人の“漫画家”の存在でした。

漫画家・荒木飛呂彦という存在

 僕は元々、子供のころから“漫画”がとにかく好きだったのですが、なかでも人生を変えた一冊となったのが、荒木飛呂彦先生の代表作である『ジョジョの奇妙な冒険』です。

 『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載された長寿作品で、これを言うと年齢がバレるのですが、僕が生まれた年に連載が開始されたということで、どこか運命めいたものを感じてしまう作品です。

 この作品と出会ったのは高校のときだったのですが、はじめは当時連載していた“第5部”をジャンプで読んで、なんだ、この良く分からない漫画と僕自身も実に辛辣な感想を抱いたのをよく覚えています。

 そのときはあくまで「変わった漫画だな」という程度にしか思っていなかったのですが、その独特の絵柄、表現法は強烈なインパクトとなって僕の脳裏に焼き付き、記憶の片隅に残り続けていたのです。

 そんな僕ですが、後にこの『ジョジョ』と実にひょんなことがきっかけで再会することに。

 親戚のおじさんの家の大掃除を手伝っていた矢先、偶然にもそこで『ジョジョ』の単行本を見つけ、あの漫画だ!となったわけですね。

 おじさんも古い漫画だからと特に執着することもなく、「欲しいならあげるよ」と、掘り出した『ジョジョ』の単行本を譲ってくれることに。

 さすがに全巻とはいかなかったのですが、単行本13巻までを手にした僕は、かつてジャンプ本誌で見たあの衝撃が忘れられず、おじさんから授かった単行本を一から読んでみようと思い立ちました。

 この偶然の連鎖が、僕を『ジョジョ』という作品の世界に引き摺り込む、きっかけとなったのです。

唯一無二の世界観に傾倒

 単行本で読み始めてすぐ、『ジョジョ』という作品が他の少年漫画とは一風変わった作りになっていることを知り、ようやくその独自の世界観やルールが分かってきました。

 まず、この作品は大まかに“部”が分かれており、ストーリーが進むにつれ時代背景や舞台となる国、そして主人公が変わるということ。

 初代の波紋にはじまり、後にスタンドと呼ばれる特殊能力を駆使したバトルになること。

 目の当たりにするありとあらゆるものが、当時読んでいた他の漫画とは異なっており、その唯一無二の世界観に僕はあまりにもあっさりとハマってしまいました。

 単行本を買い集め、本誌でリアルタイムにストーリーを追い、グッズやイベントのニュースは欠かさずチェックするなど、完全な“ジョジョヲタ”としての人生を歩んでいくこととなります。

 僕が東京に来てしばらくすると新シリーズのアニメが放送されたのですが、思えばコレが『ジョジョ』という作品が世に知れ渡る、最大のきっかけだったように思います。

 その後も外伝作品が登場したり、実写の映画やドラマが生まれたりと、様々なメディア展開が続いていく『ジョジョ』の世界。

 結婚し家庭を持った今でも、僕にとってこの作品を追うことは一種の“ライフワーク”となっており、最新部である『ジョジョランズ』も単行本ベースとはいえ、新たな展開を日々楽しみにしております。

 僕にとって“イコール人生”とすら言えるこの作品は、当然、後に作家を目指そうとする僕の“創作”の根幹を担っていくこととなりました。

“奇妙”でありながら、“王道”の熱さを

 『ジョジョ』という作品はその濃い絵柄やどこかホラーテイストな展開にばかり目が行きがちなのですが、いざじっくり読んでみると、これが実にしっかりとした王道バトル漫画なのだということが分かります。

 特殊能力や怪異に立ち向かいながらも、そのなかで各々が譲れないもののために奮闘し、仲間と共に成長していく――読めば読むほどに人生にも活きてくる様々な教訓を学ぶことができる『ジョジョ』のような深い物語を、僕も作ってみたい。

 そんな思いが、僕を“創作”の道に進ませた、最大のきっかけなのです。

 無論、尊敬する小説家さんもたくさんいますし、小説家として「この人のような作品を書き上げたいな」と思うこともしばしばです。

 しかし、やはり「どんな物語を作りたいのか」という問いに関しては、僕の根幹にはいつも荒木飛呂彦先生の『ジョジョ』があり、恐怖に立ち向かい成長する“人間”の物語を書きたい――と考えてしまいます。

 これはあくまで“夢”でしかないのですが、数々の作家さんたちと同様、将来、小説家として『ジョジョ』のスピンオフ作品が書けたら、これほど幸せなことはないでしょう。

 無論、まずは自身の本を世に送り出し、作家として食っていけるようにならねば、到底敵わない夢ではあるのですが……

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